厚生労働省が行った国民健康・栄養調査(令和元年)の結果では「糖尿病が強く疑われる者」と判定された方の割合は男性で19.7%、女性で10.8%となっています。男性なら5人に一人、女性なら10人に一人という割合です。
血糖値は血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことであり、この血糖値が慢性的に高くなると糖尿病になります。糖尿病には三大合併症と呼ばれる「糖尿病性神経障害」、「糖尿病性網膜症」、「糖尿病性腎症」があります。最悪の場合、足を切断しなければならなくなったり、失明したり、透析が必要になったりと大変恐ろしい病気なのです。
目次
血糖値を上げる原因
日本人の糖尿病のうち大半が2型糖尿病と呼ばれるものです。この2型糖尿病は遺伝的な要素に食べ過ぎ、肥満、加齢、運動不足などが加わることで発症すると考えられています。
血糖値はインスリンやグルカゴンなどのホルモンによって調節されています。血糖値が下がったときにはグルカゴンなど複数のホルモンによって血糖値を上げることができます。しかし、血糖値が上がったときにはインスリンだけしか血糖値を下げるホルモンはありません。
もし、インスリンの分泌量が減少したり、効き目が悪くなったりすると血糖値をうまく下げることができなくなってしまうのです。
糖尿病の治療
糖尿病治療の基本は血糖値をコントロールすることです。そのために「食事療法」、「運動療法」「薬物療法」の3本柱が必要となってきます。「食事療法」については後述しますので残りの二つに触れておきたいと思います。
運動は短期的に見ると血液中のブドウ糖(グルコース)を筋肉に取り込んで血糖値を下げる効果があります。また、長期的に運動を継続すればインスリンの働きが良くなります。
食事療法と運動療法だけでは血糖値のコントロールが難しい場合には薬物療法が行われます。
糖尿病の食事療法
糖尿病の食事療法では正しい食習慣、食べ過ぎない、偏食をしない、規則正しい食事をすることがポイントとなります。摂取エネルギーは適正量とし、バランスの取れた食事をすることが必要になってきます。
そこで一般的に活用されているのが「糖尿病食品交換表」です。この「糖尿病食品交換表」では栄養的に似ている食品を表1~6の6グループ(調味料を含むと合計7グループ)にグループ分けしています。そして、それぞれエネルギー80kcal当たりの重量を1単位として表しています。実際に糖尿病で通院されている方であれば「1日当たり○○単位にしましょう」と言われている方もいるかもしれません。
それぞれのグループの中では「表1に分類されるご飯50g(小さい茶碗に軽く半杯)は同じく表1に分類される食パン30g(6枚切り食パン約半分)と交換できる」と言えます。つまり、この分量であればご飯の代わりに食パンを食べてもよいということになります。違うグループの食品とは交換できません。ちなみに表1~6それぞれをどのような割合で食べましょうという決まりもありますのでそれを守ったうえでのお話です。
しっかり計量
糖尿病の食事療法に限らず他の治療食に対しても言えることですがしっかり計量することが大切になってきます。正確な計量のためにはキッチンスケール(秤)や計量カップ、計量スプーンが必要です。また、「糖尿病食品交換表」では実際に口にする可食部が書かれています。注釈として廃棄部も含んだ重量で書かれていることもあります。
ベジファースト(ベジタブルファースト)で血糖値コントロール
適正量のエネルギーとバランスの取れた食事をするためのツールとして「糖尿病食品交換表」を紹介しました。
次は食べ方にアプローチしていきたいと思います。
「ベジファースト(ベジタブルファースト)」という言葉をご存知ですか?
この食べ方には大きく次の3原則があります。
- 食事の初めは野菜から食べる、食べきる
- ご飯などの炭水化物は食事の最後に控えめに食べる
- ゆっくりよく噛んで食べる
つまり最初にゆっくりよく噛んで野菜のおかず(副菜)をたっぷり食べきります。その後、肉や魚、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品などたんぱく質のおかず(主菜)を食べます。最後にご飯やパン、麺類など炭水化物(主食)を控えめに食べるといったものです。
野菜から先に食べることで小腸での炭水化物の消化・吸収が緩やかになります。その結果、血糖値が上昇しにくくなるのです。
「糖尿病食品交換表」を活用するように言われていない方はこの「ベジファースト(ベジタブルファースト)」から始めてみてもよいのではないでしょうか?
今回は血糖値コントロールの方法として「糖尿病食品交換表」と「ベジファースト(ベジタブルファースト)」について紹介しました。
巷には誤った情報も溢れています。実際に糖尿病で病院にかかられている方は信頼のおける医師や管理栄養士の話をもとに食事療法を行っていくようにしましょう。