管理栄養士が教える「高血圧の原因と血圧を下げる食べ物について」

生活習慣病で通院されている方のうち高血圧性疾患(高血圧の状態というだけでなく、高血圧が原因で心臓病や脳血管疾患など様々な合併症を発症した状態)で通院されている方が最も多く、人口10万人当たり男性で418人、女性で522人、平均すると471人となっています(令和2年患者調査)。また、収縮期(最高)血圧が140mmHg以上の方は男性で29.9%、女性で24.9%となっています(令和元年国民健康・栄養調査)。

ちなみに、食塩の摂取量を見てみると1日当たり男性で10.9g、女性で9.3g、平均して10.1g摂取しているというデータが出ています(令和元年度国民健康・栄養調査)。

血圧が上がる原因

私たちの体の中には血管があり、その中を血液が流れています。流れている血液がその血管の壁に与える圧力が血圧です。血液は心臓がポンプとしての役割を果たすことで絶え間なく全身に血液を送り出しています。そして、その心臓が収縮したときに血管にかかる圧力が収縮(最大)期血圧、拡張したときに血管にかかる圧力が拡張期(最低)血圧というわけです。血圧は運動や食事など日常生活のあらゆる行為で変動します。

高血圧は本態性高血圧と二次性高血圧に分類されます。二次性高血圧は何らかの病気があることがきっかけで高血圧となっているものであり、本態性高血圧はその原因が不明です。ただし、遺伝的要因や生活習慣、年齢などが本態性高血圧の発症に関わっているのではとされています。ここでの生活習慣とは塩分の摂りすぎや肥満につながるような食習慣、喫煙、過度な飲酒、運動不足などです。

日本人の高血圧の場合、大半がこの本態性高血圧であると言われています。

減塩について

今回のテーマは血圧を下げる食材ですが少し減塩について触れておきたいと思います。

おそらく高血圧の方の食事と言えば減塩食が思い当たるのではないでしょうか?

ざっくりとした説明になりますが、食塩を摂りすぎることで血液中の塩分濃度が高まります。これを薄めるために血液量が増えます。その結果、血管にかかる圧力も高まり血圧が上がるというわけです。

減塩をすれば血圧を下げられるというのはこのルートを遮るということです。

血圧を下げる栄養素・食材

減塩以外にも次のような栄養素を摂ることで血圧を下げられると言われています。

カリウム

カリウムは野菜や果物、芋などに多く含まれており、水に溶けやすいという性質があります。そのため、同じ量のキャベツを使った場合でも生サラダの方がボイルサラダよりも多くのカリウムを摂ることができます。キャベツを茹でるときのお湯にカリウムが溶け出してしまうということです。

カルシウム

カルシウムはご存知の通り牛乳・乳製品や小魚などに多く含まれる栄養素です。他にも生揚げ(厚揚げ)、豆腐、小松菜、チンゲン菜などに多く含まれます。カルシウムはビタミンDを多く含む魚類やきのこ類と一緒に摂ることで吸収を高めてくれます。

マグネシウム

マグネシウムは豆腐(特に木綿豆腐)に多く含まれる栄養素です。他には木の実やほうれん草、ひじきなどに多く含まれます。

オメガ3脂肪酸

おそらく聞き慣れない言葉だと思います。DHAやEPAといった魚に多く含まれる脂肪酸の総称がオメガ3脂肪酸です。サバやサンマ、イワシなど脂ののった魚に多く含まれます。また、油脂類の中では特にえごま油とあまに油に多く含まれます。

ポリフェノール

ポリフェノールには数多くの種類があり、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、緑茶などに含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボンなどがあります。

保健機能食品とは

保健機能食品は一般食品とは異なる「いわゆる健康食品」のことです。「血圧が高めの方に」、「お腹の調子を整える」、「食後の血糖値が気になる方に」などの機能表示がされているパッケージを見たことはないでしょうか。

この保健機能食品はさらに機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品(トクホ)の3つに分かれます。これらはそれぞれ「国の審査なしで事業者の責任において機能表示できるもの」、「国が定めた基準を満たしていれば国の審査がなく機能表示できるもの」、「個別に国の審査を受けてパスしなければ機能表示ができないもの」に分類することができます。つまり、その商品が世間に出回るまでのハードルの高さに違いがあるということです。これが何を意味するかくみ取っていただければと思います。

保健機能食品を利用するときの注意点

今、この記事を読まれている方の中にはスーパーやドラッグストアなどで「血圧が高めの方に」と書かれた商品を目の前に財布の中身と相談した経験がある方もいるかもしれません。それではここで保健機能食品を利用するうえでの注意点に触れておきたいと思います。

  • 健機能食品は医薬品ではありません(病気の方を想定した食品ではありません)
  • 病院で薬を処方されている方は医師、薬剤師に相談しましょう
  • 摂取目安量や摂取方法などを守りましょう
  • 食事の基本は主食、主菜、副菜からなるバランスのとれた食事です

これらを踏まえたうえで保健機能食品をうまく利用できるといいですね。

今回は血圧を下げる食材や保健機能食品を利用するときの注意点などをお話しました。特殊な食品や保健機能食品に血圧を下げる効果を期待して利用する場合には信頼のおける情報をもとに試してみてください。もし、体調に異変があれば利用を中止し医師に相談してください。

田中 稔也
著者田中 稔也

国家資格管理栄養士・調理師
その他資格
糖尿病療養指導士・食育指導士

経歴公益社団法人福岡県栄養士会
筑後支部 山門分会長 
(任期:2007年~2009年)

メディア出演FMたんとにてラジオ番組
79.3MHz

2006年から内科専門病院にて病棟担当制の管理栄養士として月に100件以上の栄養指導に従事し、院内NST(栄養サポートチーム)の一員として活動。2010年に健康食・治療食宅配「みのりや柳川店」開店。2013年に「みのりや大牟田店」。地域の皆さまへ「本当に安心・安全な食を提供し、健康で豊かな生活を送るお手伝いをしたい」との想いで日々仕事に励んでいます。