糖尿病を患うと、人工透析や食事管理と日常生活にさまざまな制約が生まれるイメージがあります。これまで自覚症状や糖尿病の種類についてお話してきましたが、今回は実際に糖尿病になった場合の「食事」について説明していきます。条件付きではありますが、ラーメンが食べられる事実もありますので、その中身を覚えておきましょう。
身体の負担を第一に考えた食事療法が必要となる
まず糖尿病がどんな状態であるかおさらいですが「なんらかの原因によってインスリンの働きが悪くなり、食事から摂取したブドウ糖が正しく体内に吸収されず、血中の血糖値が上がってしまう」状態をさします。
いわゆる高血糖状態が続くと、合併症を引き起こし手足などが壊死してしまうケースもあります。まずは血糖値のコントロールを行うべく、インスリン注射、そして食事での塩分やカリウムの制限といったステージがあり、さらに症状が重くなると人工透析が必要になります。
特にインスリンを分泌できなくなってしまう「1型糖尿病」の方には、インスリン注射と同時に食事療法が始まります。「2型糖尿病」の方はインスリンをまったく分泌しないわけではないので、これもまたブドウ糖の量を制限して、すい臓(インスリンを分泌する器官)の負担を減らす食事療法が必要となります。いずれも必要以上のカロリーを摂取しないようにして身体の回復をうながすためのものです。
以前のコラムでも紹介した「一汁三菜」が、まさに食事療法の基本となりますので、あわせてお読みいただけますと幸いです。
外食時も忘れないようにしたい置き換えとプラスα
では糖尿病と診断されたからといって、日々の食事がガラッと変わるかといえばそうではありません。むしろあまり変わらないかもしれません。その内容は糖尿病ではない健常な人が食べても良い、誰もがより健康を意識できるものといえます。それほどに過剰な塩分やカロリーの摂取、乱れた生活習慣などが糖尿病の原因であるともいえますね。
ストレスのない日常の過ごし方、身体に負担の少ない栄養バランスのとれた食事、といった「普通」がいかに重要かということです。
身体の状況によりますが、外食禁止というわけでもありません。ラーメンだって食べることができます。例えば、油分の多いとんこつラーメンはさけて醤油ラーメンにする、塩分過多にならないようにスープは飲み干さない。野菜や卵をトッピングして食物繊維やたんぱく質をとる。これだけでも摂取する栄養素の比率が違ってきます。
たっぷり衣のついたトンカツでさえ、ヒレを選ぶだけでも脂質が抑えられます。でも衣はできればとったほうが良いでしょうね。
こうして血糖値を上げない工夫を見つけていくことが、できるだけ普通の生活を送るためのカギとなります。極端な例を出しましたが、よくある定食なら、野菜サラダから食べることもそうですし、ごはんを玄米や雑穀米に変えて食物繊維を摂ることも有効です。
栄養素のバランスがとりやすくなる「食品交換表」とは?
ここまでは、食事や栄養摂取について日常で気をつけるポイントの例を説明してきました。
糖尿病と診断されると、まず主治医から生活スタイルの改善や1日に摂取していい総カロリー数が設定されます。それまではダイエットでもしていない限り意識することは無いですよね。しかし「1日1600kcalにとどめてください」と言われた途端、何がどれくらい食べられるかを理解しなければなりません。また年齢やもともとの体型、代謝量によって個人差の出る部分でもあります。
今回は少しだけふれますが、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルといった代表的な栄養素を6つに分けた「食品交換表」というものがあることを覚えておいてください。まず80kcalを1単位として、摂取しても良い1日の摂取カロリーで割ると「XX単位分、食べても良い」ことがわかります。
例えば炭水化物ですと、ごはん200gで4単位(320kcal)です。これを同じ炭水化物であるパンと置き換えたい場合、パンは1単位30gですので、120g分となり、およそ食パン2枚分と置き換えられることとなります。
炭水化物を例に挙げましたが、タンパク質や脂質など同じ栄養素グループの中で置き換えることによって、メニューを変えられ日々の食事にバリエーションが生まれます。
このように、総カロリーの制限や、塩分過多にならない、また食物繊維やタンパク質を摂取するための工夫を意識する必要がある日常が待っている、ことが糖尿病とつきあっていく上で大切なことといえます。現在健康な人も、日ごろから今回説明した工夫を取り入れていってみてくださいね。
あわせてお読みください
- 糖尿病にはどんな種類がある? その判断基準の症状は
- 糖尿病が引き起こす合併症。その前にどんな自覚症状があるの?
- 糖尿病に必要な食事療法とは