「レモンX個分のビタミンC」、本当に豊富なの?

商品パッケージには栄養成分表示が記載されていますが、特に表側には「レタスX個分の食物繊維」「レモンX個分のビタミンC」と、大きく書かれているケースが多く、その栄養素が豊富に含まれている印象を与えます。しかしその栄養素が豊富だから表記されているのか、キチンと分析する必要がありますよね。今回は、そのあたりを紐解いていきましょう。

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野菜や果物を何個も食べられない、それが手軽に摂取できるイメージに繋がっている

健康食品やサプリメントのパッケージを見ると、「〇〇が何個分の△△」といった表現を見かけますよね。馴染みのある食品に含まれている特定の栄養素が、野菜や果物の量に換算されているわけです。

しかし何個分といわれても、そもそも1個あたりに含まれている栄養素が多くないとアピールとしてはどうなの? となりますよね。でもあえてそう表記することによって豊富なイメージを持たせやすいトリックといえる場合もあるのではないでしょうか?

食物繊維を例に「レタス◯個分の食物繊維」と表記されていたとします。では「レタスはどれだけ食物繊維が豊富なの?」という答えを知りたいですよね。その正解は100gあたり約1g。さらに100gあたり約1gが、他の野菜と比較して多いのか? ということ。わざわざそこに表記するくらいなので、「レタスって食物繊維が豊富なんだ!」と印象づけられる人もいることでしょう。

じつは、100gあたりの食物繊維量が多い野菜、もっと他にもたくさんあります。例えばゴボウは100gあたり5g、サツマイモは100gあたり2.2g。それぞれ5倍と2倍です。これ、どうして含有量が多い野菜で例えられないのか、となりますよね。

わざわざ少ない(他と比較してですが)種類の野菜を例に挙げている、と思われても仕方ないと思います。レタス1玉を想像して「じっさい1玉全部は食べられないけど、その商品を購入すれば楽に1玉分摂取できる」という誘導を促しているフシさえ感じます。

さらにキャベツは1玉に20gもの食物繊維が含まれていますが、あれだけ大きい野菜であれば、それくらいは入っているだろうな、という印象もあり、商品に5gの食物繊維が含まれていたとして「キャベツ1/4玉分の食物繊維」と書かれていれば少ないイメージを与えてしまうことも考えられます。

こうしてキャッチフレーズはインパクトをもたせたいがために考えられる役割を持っていますので、換算される大元の情報を意識することが賢い消費者への道である、ともいえますね。

ひっかけ問題のような感じですが、ウソはついていない。なんらかの意図があってそういうキャッチコピーが採用されているという事実がある、ということを知っておいて欲しいのです。

レモンは本当にビタミンCが豊富なのか?

ところで、よく飲料や菓子類などで表記されているビタミンCについてどんなイメージを持たれていますか? 多くの人は「レモンX個分」というフレーズを思いだすかもしれませんね。

ではレモンがビタミンCの含有量を指し示すために適しているフルーツであるのか? を考えていきましょう。レモンは誰もが知っている酸っぱい柑橘系の果物ですが、ビタミンCも同様の味をもつイメージがあるのではないでしょうか。

実はビタミンC、無味で無色で、黄色くも酸っぱくもありません。あの酸っぱさはクエン酸によるものなのです。ではそのビタミンCを含む飲料に、どうしてレモン何個分という記載がされているかというと、推測ですがレモンが含むビタミンCの量が計算しやすいことが考えられます。

【レモンに含まれるビタミンCの量】

  • 可食部100gあたり100mg
  • 果汁100mlあたり50mg

上記は、食べられる箇所や絞った果汁の量ですがレモン自体で見ると、まるごと1個がおよそ120g。それに含まれる果汁は40ml(30%)ほど。となると「レモン1個あたりのビタミンC」は20mgということになります。

この計算しやすさは、キャッチコピーに使いやすい要因としてあると考えます。

レモンよりもビタミンCの多い食材

今回は「キャッチコピーに惑わされないように」という回でしたが、ついでにビタミンCが豊富に含まれている食材を少し紹介して終わりたいと思います。レモンよりも多くビタミンCが含まれている食材がたくさんありますよ。ちなみに厚生労働省が定めるビタミンCの摂取推奨量は、「15歳以上の男女では1日100mg」とされています。

【可食部100gあたりのビタミンC含有量】

  • レモン 100mg
  • アセロラ 1700mg(酸味種)
  • キウイ 140mg
  • イチゴ 62mg
  • 赤ピーマン 170mg
  • ブロッコリー 120mg
  • 白菜 88mg

特にアセロラの含有量が飛び抜けていることがわかりますね。摂取に関して、ビタミンCは水溶性なので、大量に取り込んだとしても尿で排出されます。ビタミンCを180mg摂取すると70〜90%が吸収され、1000mgを超えると吸収率は50%未満になります。

商品棚に並ぶ食材や商品を買い求めるとき、派手なキャッチコピーに惑わされず賢い消費者でいられるよう情報はキチンと確認しましょうね。

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この記事を書いた人

田中 稔也のアバター 田中 稔也 管理栄養士

国家資格
管理栄養士・調理師
その他資格
糖尿病療養指導士・食育指導士

経歴
公益社団法人福岡県栄養士会筑後支部 山門分会長 (任期:2007年~2009年)

メディア出演
FMたんとにてラジオ番組放送中79.3MHz (毎週水曜12:27~)

高校卒業後、料理人を志し地元の和食店にて修行。栄養学に興味を持ち始め平岡栄養士専門学校へ入学。調理師、栄養士免許取得後、特別養護老人ホームの調理現場責任者に従事。2年の現場経験の後、独学で管理栄養士国家試験を受験し一発合格。その後、内科専門病院にて病棟担当の管理栄養士として糖尿病を主とした生活習慣病患者の栄養指導を毎月100件以上行い糖尿病療養指導士取得。院内ではNSTチームメンバーとして活動。2006年〜2008年、福岡県筑後地区栄養士会分会長就任。任期満了後、退任。
現在は健康食に特化した配食事業の会社を2010年から経営。地域の皆さまへ「本当に安心・安全な食を提供し、健康で豊かな生活を送るお手伝いをしたい」との想いで日々仕事に励んでいます。
また、これまでの経験を活かし管理栄養士として、食に関連した生活習慣病の改善、美容、ダイエット等の健康情報を発信をしています。 

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